オンラインサロン・オーナー 佐藤勝美

暮らしと健康をととのえると言っても、
魔法のように一瞬で、
すべてを変えることはできません。

すべてを一瞬で変えてくれる魔法の杖を欲しがると、
日々の暮らしは刺激や不安に追われ、
ジェットコースターのように激しい変化の繰り返しになって、
いつかは自律神経が疲れ果ててしまいます。

自律神経が疲れ果ててしまってはホメオスタシスが保てなくなり、
おなかの中の環境とおなかの外の環境との、
調和がとれなくなります。

自律神経はゆっくりとでも、
ゆらぎ続けることが大切なのです。

自律神経がゆらぎ続けることによって、
おなかの外の環境が不安定に変化しても、
おなかの中の水分や塩分、糖分の濃度や量、あるいは体温や血圧などを、
ある一定の範囲内に保ってくれます。

おなかの中と外のバランスは、
栄養、デトックス、運動、睡眠、ストレスコントロール、休息、マインド、酸素(姿勢)など、
様々な要素によって成り立っています。

ですから、おなかの中の環境をある一定の範囲内に保つには、
色々な視点を持ち、柔軟に視点を変えながら
暮らしと健康をととのえることが大切です。

そしてもし、あなたに叶えたいゴールがあるならば、
今できることを選びながら、
長期プログラムを立てて目指すのです。

しかし今、
痛みなど、あまりにもつらい症状に襲われていると、
そのことが自律神経を大きく乱してしまいます。

そんな時は先ず、
症状を和らげることを優先して、
治療などの的確な対処療法を選びます。

そして、症状が和らぎすこやかさを取りもどし始めたら、
また叶えたいゴールを目指し、
長期プラグラムをスタートさせればいいのです。

一番大切なのは、
あなたにとってのすこやかさと、
あなたにとっての心地よい暮らしが、
続いていくかということなのです。

「Club おなかにてあて」は、
一人ひとりの今に寄り添いながら、
あなたがゆらぎ続けられるようにサポートします。

さあ、あなたは先ず、
何から始めますか?

子どもも大人も動物たちもみんな、「おなか」から元気に

私は、このオンラインサロン「Club おなかにてあて」をオープンする前に、トップページに掲げるオンラインサロンを象徴するようなキャッチフレーズを何にしようか考えていました。

そして悩んだ末に、こんなフレーズにしたのです。

子どもも大人も動物たちもみんな、「おなか」から元気に

もっと分かりやすく、例えば「健康になりたい人、みんな集まれ」みたいなフレーズでも良かっったかもしれませんが、どうしても「動物たちも」と入れたかったのです。本当は「木々も」「石ころも」「水も」「空気も」と、入れたかったぐらいです。

命は一つひとつ個性を輝かせながらも、多様性に富むことで、さらに輝いてきます。そんなことを表現したくて、このフレーズが浮かんできたのでしょうか。

その答えが、赤谷の森に入った時に見え始めました。

森の樹木も社会を作っている

さあ、赤谷の森の話に戻りましょう。

赤谷の森では、自然を再生を目指す「AKAYA プロジェクト」という活動が20年目を迎えました。

先日、そのプロジェクトを支えるひとり、日本自然保護協会、生物多様性保全部の武田裕希子さんに森を案内してもらいました。

以前、裕希子さんが「赤谷の森」について語る新聞記事を読み、その奥にある世界を見てみたいと思い、人づてにコンタクトをとってみました。そしてつながることができ、快く機会を作ってくださったのです。

かつてこの地域では、ダムやスキーリゾートの開発が計画され、多くの生き物が暮す場が危機にさらされ、この地に住む人々になくてはならない温泉のめぐみも失いそうになりました。

しかし、この自然豊かな地を守り、生物多様性を取り戻すための拠点として生かしていこうと、地元の人々、行政や自然保護団体などが力を合わせて、歩み始めたのです。

雪深い赤谷の森を歩きながら、たくさんのお話をうかがいました。

裕希子さんから聞く森の話、野生動物たちの話、そして、裕希子さんがつなごうとする人と人、人と森の話。

それは、私がてあてを通して向かい合う自律神経と、環境に対して自らを整えるその作用と重なるお話ばかりでした。

私は以前読んだ「樹木たちの知られざる生活」という本を思い出しました。その本にはこんなことが書いてあります。

では、樹木はなぜ、そんなふうに社会を作るのだろう?どうして、自分と同じ種類だけでなく、ときにはライバルにも栄養を分け合うのだろう?その理由は、人間社会と同じく、協力することで生きやすくなることにある。木が一本しかなければ森はできない。森がなければ風邪や天候の変化から自分を守ることもできない。バランスのとれた環境もつくれない。

ペーター・ヴォールレーベン「樹木たちの知られざる生活 森林管理者が聴いた森の声」,早川書房,2018年11月,電子書籍版16ページ

赤谷の森は森に人が関わることで、人もその社会の一員になっていたのです。

迷ったら子どもや動物や森に聞く

こちらはその時、赤谷の森で撮った写真です。左側を走るのは野うさぎの足あとだそうです。

前足を重ねるように着き、その前足を追い越すように後ろ足を跳ねる。足あとから想像するそのダイナミックな動きが目の奥を走ります。

私は普段、つらい症状に悩む人たちを治療していますが、本来生き物は強い力を持っている。どこかでバランスを失ってしまっただけ。

それを確認しに、時々、「どうぶつたちのいるところ」にお邪魔させてもらおうと思います。そこで感じる森のしくみは、おなかのしくみをより理解するのに役に立つに違いありません。

私は大人になるにつれ、自分の感覚がどこか損なわれてしまっているのではと思っています。それは決して自分を卑下しているわけではなく、大人になるに従っておなかの感覚を拾うセンサーは弱まってしまうものなのです。

弱まった感受性で間違ってみないように、表現を続け、関係性の中で自分の感受性を確認しています。

特に迷った時には、子どもや動物に聞くのが一番です。だって人間の大人にはわからないセンサーをいっぱい立てているからです。

そして、これからは森にも聞いてみようと思います。

森の木々が多様な種類、多様な樹齢であると、そこには色々な生き物が住むことができ、いつも生命にあふれているのです。

野性の中で生きる動物たちは、思考を操る人よりも、より自律神経の状態を敏感に感じながら生きています。

なんと言っても我々人間も動物、動いてこそ循環が促され、体のバランスが保たれるようにできています。

そこから学ばない手はありません。

自然保護と予防医学

私は裕希子さんから色々とお話を聞いていて、自然保護とは予防医学の考え方に似ているなと思いました。

予防医学を説明するのによく、氷山の例えを使います。

氷山は海面に浮かんで見えるのはほんの一部分で、海面の下にはその何倍もの大きな本体が隠れています。

健康も同じで、病気につながるような症状はなくても、なんとなく不調を感じている人はたくさんいると思います。その不調の根っこには、ストレスや運動不足など色んな要因が隠れているのです。

仮に病名がつくような状態でなくても、未病、潜病と言われるように、からだの中ではどんどんバランスが失われていることがあります。

その状態が何年も続き、ある時病気として海面から出てくる前に、水面下でのバランスに着目して、病気を予防しようと言うのが予防医学です。

私たち「Club おなかにてあて」は、隠れている自律神経や代謝の状態にフォーカスして暮らしと健康をととのえうことを大切にしています。見えにくいおなかの中にこそ隠れた根っこがあるのです。

裕希子さんの話を聞けば聞くほど、自然豊かな地を守り、生物多様性を取り戻すのは予防医学の考え方と重なります。特に守るだけではなく、未来に向けて進化していくと言う意味では、「Club おなかにてあて」が目指す予防医学と同じなのです。

森の自然保護も同じあように、立ち並ぶ木々の根っこに世界があり、光や空気が重なって豊かな森が保たれます。

人が作った人工林を見ても自然を感じる人はいると思いますが、見えないところで支え合っている自然林を見ると、それを保つために働いている色んな要素に着目しないと多様性のある森は保たれないのです。

私に療術の世界を教えてくれた古くからの友人がこんなことを言っていました。

「深い海と高い山は同じだ。」

生き物は海から生まれ、高い山まで多くの命を産みました。

植物の根っこと、人の内臓は、豊かな微生物生体圏の中で、同じ働き方をしています。

世の中には、よく似た現象というものがたくさんあります。

ミクロとマクロの世界にも共通したルールのようなものがあります。

豊かな生態系が保たれた森に立ち入ることは、私たちの体内環境を整えるのにとても参考になります。

赤谷の森を守る活動に加わることで、おなかの中にある森のしくみを感じてみようと思います。

森とおななかの対処療法と長期プログラム

私が一人ひとりの健康サポートをするのと同じように、森の保全にも対処療法と長期プログラムがあるそうです。

私は、私の小さな治療院で、赤谷の森で営まれていることと同じことをしたくなりました。

森の保全や自然保護活動については、今後より専門的な方に記事を書いていただきたいと思っています。

<参考文献>

『赤谷ノート』

監修 財団法人 日本自然保護協会

『樹木たちの知られざる生活 森林管理者が聴いた森の声』

著者 ペーター・ヴォールレーベン

訳者 長谷川 圭

早川書房 2018年11月15日

この記事を書いた人