理学療法士 杉山 貴規

from 杉山貴規 都内カフェ

もう9月になりましたが、暑さが残る日々が続いていますね。

夏の疲れがどっと出るこの時期、体には気をつけましょう!

っていうか、

なんと!この自分が先日体調を久々に崩したんですよ。

体を崩したっていうのは、最近の某コ◯ナウィルスではなかったですが、

朝、鏡を見ると上唇の上に赤い発疹が、、、

ヘルペス???

ま〜ほっておけば治るかなぁ〜と思っていたんですが日に日に痛くなるし、発疹が大きくなる一方。

このままいったら、たらこ唇がさらに大きくなる。

そう思って、皮膚科に受診したんです。

私「先生、ここにヘルペスができていて、痛いんですよ。」

先生「うわぁ〜、本当だね。おおきいね。・・・ってここにも発疹あるけどこれ痛くない」

自分も知らないうちに左頬から耳にかけて小さい発疹の行列ができていたんです。

全然気がつかなかった。

すると先生が

先生「それ帯状発疹だね。これ。痛いでしょ?他にも痛いところない?頭とか。口とか」

自分「痛いです。」

言われてみれば、ヘルペスができる随分前から、耳から頭部にかけて激痛が走っていたんです。

自分では、マスクのつけすぎで偏頭痛になったんだろうと思っていたんですが、その原因が帯状発疹だとは思いもよらなかったんです。

(え〜〜〜帯状発疹か〜)

先生「きっとね〜、疲れとストレスが原因だよ。これ1週間飲めば治るから飲んでおいて」

帯状発疹というと、病院でよく見たものです。

入院患者さんが、よくなっていて、看護師さんがアズノール(塗り薬)を塗りたくっていたのをよく見ました。

なので、ご高齢の方がよくなる病気みたいな感じで思っていたんで、自分の中ではものすごくがっかり。

そんなもんで、規則正しい生活と先生からもらった抗生剤とアズノールを使って今ではもう完治。

ストレスと睡眠不足が招いた結果

体が悲鳴をあげていたなんて思いもよりませんでした。

このように、自分の知らないところで体が悲鳴をあげて、最終的に痛みを生じてしまうっていうことは怪我でもよくあることです。

例えば、今回話すテーマなんですが、

セーバー病(踵の痛み)なんかもその一つです。

一種の成長痛ってやつなんですが、転んでしまった、相手にぶつかった、何かにぶつけたという外傷的なものではなく。

オーバーワークと疲労が合わさって痛みを生じるやつなんですよね。

じゃ〜このセーバー病(踵の痛み)をどのように治し・予防していくのかを今回話していきたいと思います。

まず初めに、セーバー病とはどういう怪我なのか?

それをまず理解していきましょう。

怪我の中身を理解することで、このあと話す内容がグッと入ってきます。

セーバー病?シーバー病?骨端症?どれが正解?

もし、これを読んでいる人、これを読んでいなくて身近に踵の痛みで困っている人の年齢が10歳から12歳であれば、8割型はセーバー病って思っていいかもしれません。

セーバー病は成長過程で起こる疾患なんです。

セーバー病は英語名で、他にはシーバー病とも言います。

それというのも英語でSever’s diseaseと書き、上記の言い方になります。

日本語名では踵骨骨端症です。

セーバーなのかシーバーなのか踵骨骨端症なのか

ややこしいですが、全て同じ疾患です。

ここからはセーバー病の概要なんですが、

セーバー病(シーバー病・踵骨骨端症)は、10歳前後の男児に多くみられ、ひどい場合は歩くと踵の痛み、踵を押すと痛いことが、その症状です。

運動の強度が強かったり、その強度を長期にわたり続けた時(オーバーワーク)後に症状が出ることが多く、かかとの痛みのため、つま先歩きになることもあります。

発育期の子どもの弱い踵骨骨端部(かかとの骨の端)に運動などで負荷がかかり、足裏の足底筋の過度な収縮とアキレス腱の引っ張り合いが持続的に加わることで、踵骨に血流障害が起こり、踵骨骨端核の壊死、または骨軟骨炎を発症するのがこの病気です。

自分は壊死までは見たことはありませんが、

炎症が起きることは確かで、炎症が持続するとひどい場合は壊死になることがあります。

痛みの部分はどうなってるの?

踵が痛いと言っても一体どうなっているか考えたことはありますか?

これが一番重要かもしれません。

なぜなら、目のまえで踵を痛めているお子さんや今これを読んでいる方が踵が痛い時に自分がどのようになっているかを知りたくはありませんか?

知ってどうするのか?

それは、本当に重要なことなんです。

痛みの組織はどこなのか?

  • 皮膚
  • 筋肉
  • 骨膜
  • 筋膜
  • 神経
  • 血管
  • 関節
  • 関節包

などなど

専門的なことを言えばまだまだありますが、

これらのどの部分が痛みを生じているかで、何をどのように注意すればいいのかがわかってきます。

基本的にセーバー病は骨端症なので成長期で未発達な骨が引っ張られて痛みを伴います。なので、分類的には骨や骨膜などに当たります。

そう考えると骨の疾患であればあなたはどのように注意をしますか?

骨折と同じように捉えてもらっても構いません。

そう考えると一番は

【安静】

になるんです。

病院に行って2〜3週間は安静にしてくださいっていうのは

・骨が徐々に安定してくるから

これなんですよね。

痛みというのは安静にしていれば最短で3日程度で徐々に落ち着きを見せてきます。

もしそれ以上、同じ痛みが継続したり、痛みの度合いが高くなっていることは普段の生活で踵の部分に何かしらのストレスがかかりすぎているっていう合図なんですよね。

つまり【安静】ではなくオーバーワークになっていることになります。

じゃ〜何で成長期の子供でしかも10歳前後でこの疾患が起こり易いのでしょうか?

それを次の章で説明します。

子供の骨と大人の骨

骨というのはみんな同じ形をしていると思っていないでしょうか?

成人でも、生活環境や趣味などの環境で多少の歪みが生じてきます。変形性関節症などはその一種です。

しかし、これは成人になってからの話なんですよね。

子供と大人とでは骨の数が全く違ってくるんです。

知っている人も多いですが、

ここで問題です。

成人では骨の数は206本とも言われていますが、赤ちゃんでは一体何本になるでしょうか?

  1. 100本
  2. 200本
  3. 300本

正解は

3です。

正確にいうと300本以上なのですが。

それが、大人になるになると減る

なぜか?

それは骨と骨同士が合体してくるからなんです。

じゃ〜足部はどうなっているのか?

実は足の骨の数は子供の時は少なく、徐々多くなっていっているんです。

幼児の足はとてもやわらかく

足の「骨」は、骨というよりは「軟骨」の状態で、骨の数も大人より少なく、成長に従ってカルシウムが蓄積され、骨に変わってくるんです。

骨と骨の間のすきまは大きく、脂肪に覆われ、骨、関節、靭帯も十分に形成されていません。

特に踵は子供の時は小さく、大人になると踵の占める割合は足全体の半分くらいの大きさになるんです。

つまりその成長過程において

剛体になろうとしている部分に過度なストレスを加えるとどうなるのか?

それはきっと被害が出ますよね。

それが痛みや壊死に繋がったりするんです。

このように、子供の骨の成長をみてもらえると、どこに負担がかかっており、痛みが出る理由がわかると思います。

じゃ〜何で、セーバー病になる子供とならない子供がいるのでしょうか?

それにはある理由があります。

踵が痛い子供と痛くない子供

簡単にいうと、運動負荷の加減です。

運動負荷?

日々の運動によるものです。

今の現状、さすがに毎日子供たちが外で遊ぶことが少なくなってきましたよね。

コロナの影響があり、

家での遊びが多くなってきます。

家遊びというと、家で子供たちが集まって遊ぶということではなく、

オンラインゲームなどで遊ぶ子供たちが圧倒的に多くなっているのが実情です。

そのため、外で遊ぶ機会は少なくなり、普段から体を動かす機会が圧倒的に減ってきているんです。

自分はクリニックで子供たちを見ていますが、今回話しているセーバー病や前回話したオスグッドなど

これらには上記の状況に共通点があります。

それは、普段は家でオンラインゲーム、特定の日だけ習い事のスポーツっていうのが多いんです。

そうなってくると週2〜3回程度、スポーツの現場で高負荷な運動を行うわけです。そのため、体には相当な負荷がのしかかります。

その結果、骨端症になってしまうんです。

普段から外遊びの多い子はあまりこの骨端症は見かけません。

あくまでも、これは私の経験からなんですが、

しかし、普段から外遊びをしていても、セーバー病になる子はいます。

では、それはどのような子なんでしょうか?

それは、競技専用のシューズを小さい頃から履いている子に多い点です。

競技専用のシューズはその特性を生かしたシューズになっています。

それは、スポーツのパフォーマンスを上げる効果があって、早く走れたり、力強くステップできたり、ボールを遠くに飛ばせたりなどなど

兎にも角にも、スポーツに特化したシューズなんです。

そのようなシューズにはある欠点があります。

それは、負担がかかるという点です。

シューズによってパフォーマンスが上がるということは、体がそれによって身体的に動かされている部分や負担がかかってくるんです。

そのような靴を先ほど示した足の発育段階から見るとやはり、どこかに無理が生じてくるわけです。

普通のランニングシューズやトレーニングシューズはそこまでの好パフォーマンスを実現できるものではないので、体に負担は少なくなります。

なので、最初は子供がスパイクを履きたいと言っても、履かせない方が無難です。

他には何があるのか?

それは環境です。

環境とは地面にあります。

地面の硬さで足裏にかかる負担は大きくなります。

  • コンクリート
  • 人工芝
  • タータン
  • 体育館の床
  • 芝生

など

これを見てもコンクリートや人工芝はなんとなく体に負担がかかりそうだと思いませんか?

硬ければ硬いほど、足部に跳ね返ってくる衝撃は大きいです。

足裏にかかるデータがなかったのですが、アキレス腱にかかるデータがあったので紹介します。

歩行・走行・跳躍での脚にかかる負担

  • 歩行は体重×1.0倍
  • 走行は体重×1.5~5倍
  • 跳躍は体重×10~12倍
  • ランニング中にアキレス腱に加わる力は1 トン

これってすごくないですか?

どの環境やその人の体重の下で行なったデータなのかはわかりませんが、

ランニングで1トンもの衝撃がアキレス腱にかかるわけです。

つまり、踵にも相当の負担がかかっていることがわかりますよね。

なので、この観点からも環境というのは重要ですし、

普段から体を動かしたり、シューズの選定やインソールなどが重要になってくるのがわかると思います。

次にセーバー病になった時にはどうすればいいかです。

セーバー病はこうやって治せ!

セーバー病のケアは基本的には

【安静】

です。

よくリハビリではこの疾患になると足裏・アキレス腱やふくらはぎのストレッチなどを行うリハビリの先生をかず多く見かけますが、

これはNGです。

正確には痛みが強い時に行うことはNGということ

確かに、セーバー病の原因は足底筋膜と下腿三頭筋の引っ張り合いによって、踵骨部分が引っ張られることによって、成長線の部分が損傷して起こる疾患です。

なので、上記の部分をストレッチすることでストレスを軽減することはいいかと思います。

しかし、このストレッチという方法

ストレッチは伸ばすという意味があります。

つまり、引っ張り合いで痛みが生じているわけなので、そこの部分をストレッチしたらどうなるでしょうか?

そう、さらに悪化しますよね。

なので痛みが引くまではストレッチは厳禁です。

では何をするのか?

まずは

① 3〜5日間は安静にしながら、皮膚をやわらかくする作業をします。

→筋膜リリース・皮膚リリースなのです。自分で、踵・足の裏・アキレス腱や下腿三頭筋の皮膚を前後左右に引っ張ります。

→また交代浴の実施です。

交代浴の方法は

  • お風呂で患部を90秒間浸かる
  • 冷たいシャワーで患部を30秒冷やす

これを最低5回、最高10回程度繰り返して最後は冷たいシャワーで終わる。

② 痛みが引いてきたところで、筋肉へのアプローチです。

→足裏のストレッチ・下腿三頭筋のストレッチ・アキレス腱のストレッチなどを行います。

③ 筋肉トレーニングです

→2〜3週間後に徐々に足の裏のトレーニングを行います。

  • 椅子に座った状態で床を足の指で握る練習。
  • 座った状態で踵を持ち上げる練習
  • 立った状態で踵を上げる練習

→4週間経ったら動的な練習を実施します。

  • 大股での早歩き
  • 床から軽くジャンプしてつま先で着地
  • 20cmくらいの高さから徐々に上げていき60cmまでの高さからの飛び降りて、つま先で着地
  • 10m〜50mスプリント(段階的に行います)

などなど

その後に競技特有の動作や道具を使いリハビリを行って、翌日に痛みがどの動作でも全く出ない場合はリハビリが終了になり、競技に復帰するような段階を作っていきます。

これでもまだ大雑把です。

競技によって段階はより細かくなければなりません。

最後に日々の中でセーバー病をどのように予防していくかです。

踵の痛みは自分でケアしよう

ここまでセーバー病の病態からリハビリの方法まで説明しました。

この中の全てが実は予防になります。

なので、今までのおさらいのような形になります。

セーバー病は成長期に起こる疾患です。

成長過程で自分にとって過度な運動負荷が続いた時に踵に痛みを有します。

なので、ケアする前に、必ず日々の運動と適度な休息は欠かせません。

また、競技特性に特化したシューズの選定は足が出来上がるまでは控えたほうがいいと考えます。どうしても履かないといけない時はインソールを必ず入れることをお勧めします。

ケアの方法ですが、

過度に足を使った時や練習後は

  • ストレッチ(足裏やアキレス腱のストレッチ)
  • 皮膚のリリース(足裏やアキレス腱周辺の皮膚を前後左右に動かす)
  • 硬めのボールを使ったマッサージ(足裏やアキレス腱)
  • 交代浴

これらをゆっくりと10〜15分かけて行ってください。

適当にやっても効果は出ません。

このように、セーバー病はセルフケアで防ぐことは可能ですが、

やはり成長期の疾患、親御さんも子供のことだからといって放っておくのではなく、一緒にセルフケアに参加して楽しみながら行ってください。

意外と大人の皆さんの方が日頃の疲れで痛みを感じるかもしれませんよ。

最後に

セーバー病は成長期の怪我です。

成長痛だからと安易に考えるのではなく、結構やばいものだと感じてください。

骨と骨同士がくっつくのを運動によって妨げ、痛みを有しているからです。

単なる成長痛と思っていると長引き、楽しい運動をチームメイトや友達とできなくなる時間を作ってしまいます。

セーバー病になったらまずは【安静】です。

【安静】は最高に退屈で辛いものですが、最強のリハビリです。

今回の内容を参考にしていただければ幸いです。

では、次回またお会いしましょう!チャオ!

この記事を書いた人

理学療法士

すぎやま たかのり

杉山 貴規